大阪市内のホテルにて。

休みがない。これは私が好んで選んでいることだから、何も文句はない。ただ、気分転換はしたい。私にとってホテルに泊まることがそれに当たる。だからホテルで仕事をすることが至高のひと時となる。プロフェッショナルな接客を受けると、気分が良くなることはもちろん、よっしゃ俺も頑張ろと背筋が伸びる。
ま、ずっと仕事をしているのだけれども。贅沢な空間でひたすらパソコンをいじるだけの贅沢は、なんとも言えない贅沢だ。ホテル内を散歩するのもいい。
この日もホテル内で、そんな感じの贅沢ぐあいで過ごした。夕方になり、夕食に出かけた。レトロな地下街のお好み焼き屋に入る。時間帯が少し早かったからなのか客はゼロ。
店主「らっしゃい」
大阪人特有の人の温かみはあるが、すごく適当なあいさつ。
私「ここ座りや」
貸し切りだけれど指定席。敬語の文化はない。
店主「食べたいもん言いや」
圧倒的、上から目線。ミックス玉を注文した。
店主「ミックス玉なんかいつでも食べれんねんから、もうちょっと豪快なやつ食べるか?」
私「あ、はい。じゃあそれで。」
店主「よっしゃ」
ミックス玉より豪快なやつ?それは何玉ですか?
店主「はい、出来たで、どうぞ」
店主「ほら、これ使いや(一味とこしょう)一味もええけど、コショウも意外といけるで」
店主「美味いやろ!?」
私「すみません、まだ食べてないです」
コショウからは逃げられない。慌てて一口食べた。
店主「どや、うまいやろ!」
美味いの押し売り(実際めちゃくちゃ美味しい)
きっと、すごく面倒見のいいおっちゃんなのだろうなと勝手なことを思いながら、会計を済ませた。
腹を満たしたら、また情報収集のため本とパソコンをにらむ。21時頃になり一息。首と肩こりが半端ない。ルームマッサージをお願いした。
22時。マッサージ師がご到着。白髪が多めでメガネをかけた70代ぐらいの女性。60分のリラックスタイム。
40分ほど経過してうとうとしていた時、唐突にマッサージ師が話し出した。
女性「変なこと聞いていいですか?」
すでにその質問が変やけどなと思いつつも、嫌ですとは言えない。
私「あ、はい」
女性「墓参り行ってますか?」
怖い、怖すぎる。
私「え、はい。。お盆に行きましたけれども」
女性「母方の方もですか?」
私「はい、行きました。」
女性「じゃあ、違うか…」
変な汗が出た。怖すぎる。何この人。どういうことか聞くか否か悩んだあげく、聞かない方を選んだ。話が長引きそうだし、なにせいい展開にならないのが確実だからやめにした。
そこから2、3分沈黙が続いた…
女性「私、空港で働いてたの」
私「あ、そうなんですね。コロナで大変だったでしょ」
女性「そう、仕事なくなったの」
私「それはなんと言っていいか…」
女性「でも、今こうやって仕事できていることに感謝よね」
私「感謝って大切ですよね」
女性「そうよ、感謝しないといけないよ。私昔はちやほやされて、いっぱい嫉妬されたのよ。いろんなこと言われたわ」
私「ほー。」
女性「うまく行くこともあるけど、行かないこともあるのよ」
私「そういうものなのですね」
わしゃマッサージを頼んどんねんっ!とは言えず終わりの時間。マッサージ師がドアを開け、最後に一言。
「気をつけてね。」
いや、怖いねん。